高齢者(入院患者)の転倒不安をカテゴリー化する

原著論文

入院高齢者コホートにおける入院患者(高齢者)の転倒に対する活動と不安に関する調査票を用いた転倒不安のカテゴリー化:横断研究デザイン

Categorizing fear of falling using the survey of activities and fear of falling in the elderly questionnaire in a cohort of hospitalized older adults: A cross-sectional design

Hanna Brodowski, Nicole Strutz, Ursula Mueller-Werdan, Joern Kiselev.
International Journal of Nursing Studies, Volume 126, February 2022, 104152
https://doi.org/10.1016/j.ijnurstu.2021.104152

転倒への不安は、自身のバランス感覚に対する自信を測定する尺度の「the Activities-specific Balance Confidence Scale(活動別バランス信頼尺度)」を用いて評価することが一般的です。
「高齢者の活動と転倒不安に関する調査」では、より直接的に転倒不安の概念を0.0点と3.0点のスケールで測定しています。しかし、スコアを解釈する上で、現場の助けとなるような有効なカットオフ値はいまだ明らかになっていません。
よって、そのようなカットオフポイントを特定すること、転倒不安のレベル(少、中、高)とバランス自信との関連において区別することが研究の目的です。

研究方法

横断研究

対象者98名(65歳以上の入院患者)

重度の認知障害(Mini Mental State Examination <24)または抑うつ症状がある場合、歩行ができない場合(補助具の有無、他の人の介助なし)、重度の心不全または末梢動脈疾患と診断された場合は除外されています。

転倒不安、活動、活動制限、バランス自信(活動別バランス自信尺度)、移動力およびバランス力の項目間の検討にスピアマンの順位相関係数が用いられています。転倒不安の低・中・高のカットオフ値の設定には、尺度における集団間の分散を最大化するようなカテゴリーを探すアプローチ(F検定量[F値]の比較)を採用しています(Serlin et al. 1995)。
F値は「標本平均間のばらつき」(分子)を「標本内のばらつき」(分母)で割った値なので、グループ間のばらつきが大きいとF比は大きくなり、偶然によるばらつきが大きいとF比は小さくなります。

結果と結論

とりあえず細かい方法論は置いておきまして、活動別バランス信頼尺度を参照指標としたF値により、0.6と1.4がこのサンプル内での最適なカットオフ値であるとしています(表3)。表では43.569という一番高い値の箇所です。 また転倒有病率と転倒不安の分類には、明確な関連性は観察されなかったとのことです。

この研究では、転倒不安のスコアが0.6以下の人は、不安のレベルが低く、1.4より大きい人はレベルが高いことを示したことになります。レベルの大小の判定に用いたものは、入院患者が本人のバランスに対する信頼や自信(尺度)です。
この結果自体が、すぐさま何かに活用できるというよりは、このカットオフ値による疼痛の程度やQOLなどの項目とどのような関連があるかどうか、今後の研究や調査へ一定の示唆を与える研究となっています。

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