研究を行っていく上で、その方法には様々な種類があります。
その中で、多くの研究より得られた結果をまとめる研究デザインとして、レビュー研究があり、これらは、さらにいくつかの方法論に基づいて分類されています。
システマティックレビュー systematic review
日本語では系統的レビューと訳されることが多いシステマティックレビューは、医学上(看護含む)の特定の疑問や質問(リサーチクエスション)について幅広く網羅的に特定・検索して、この検索結果を評価・統合して、かつ実践や政策、場合によってはさらなる研究に情報を提供するものと考えられています (Aromataris E, 2014)。
コクランハンドブックによると、システマティックレビューは「バイアスを最小化する目的で選択された明確で体系的な方法を使用し、その結果、結論を引き出し、決定を下すことができる、より信頼できる知見を提供する」ものとされています(*コクランについてはいつか触れたいと思います)。
要は、エビデンスに基づく医療を実践するためのガイドラインに活かすべく、世界中の研究結果を集めまくり、それらをまとめたものになります。
そのまとめたものの質を保証するためには、構造化され、事前に定義されたプロセスに従う厳格な方法が必要となります。ざっくり紹介すると、文献検索の際の定義、集めた文献を選んでいくときのスクリーニング方法、文献管理、各研究のバイアスリスク、非直接性の評価と効果指標に関連するデータの抽出などを細かく整理していくことになります(*バイアスやバイアスリスクについてもいつか触れたいと思います)。
最強のレシピは何か?
なぜだかよく分かりませんが、急にカルボナーラの最強のレシピは何か?について答え(エビデンス)を出したくなったとします。
そこでまずは、これまで報告されているレシピ(文献)をレシピ集サイトなどから集めまくります。この時、カルボナーラについて調べたいので検索ワードにはもちろん「カルボナーラ」を採用します(文献検索の際の定義)。間違ってもペペロンチーノやアマトリチャーナ、ボンゴレビアンコなどを含めてはいけません。
おそらく我こそはと思う方々が、多くのレシピを紹介していることでしょう。そのレシピの詳細を全てあますところなく記録します。
この時、システマティックレビューで大事なポイントは、茹でるパスタの種類は何か?麺の太さは?茹で時間は?クリームを使用しているのか?卵のみか?具材には何を使用しているのか?チーズは?チーズの種類は?ペコリーノロマーノ?パルメージャーノ・レッジャーノ?オリーブ・オ…などなど細かく整理して、集めたレシピを同列で比較していいのかどうか考えることです(スクリーニングやバイアスリスク)。さらに、このレシピは果たして自分で、あるいはみんながきちんと作ることができるのか否かを考えることも大切です(非直接性の評価)。
最後に、最強を決める際、数値で決めることができるのか、できないのか見極めないといけません(効果指標に関連するデータの抽出)。残念ながら数値で客観的に評価できない場合もあるかもしれません。それはそれとして丁寧にまとめるものを定性的システマティックレビューと呼んでいます。
一方、数値で評価できるものは定量的システマティックレビュー(メタアナリシス)に分類されます。
最後にシステマティックレビューを行う際、最終的に目指すポイントが大まかに以下に当てはまっているか自問自答します (Munn Z, 2018 )。
- 国際的なエビデンスを明らかにする
- 現在の実践状況を確認する/バイアスリスクに対処する/新しい知見を確認する
- 今後の研究分野の特定と情報提供
- 矛盾する結果の特定と検証
- 意思決定の指針となる報告書を作成
システマティックレビューを読む側としては、このあたりのことを整理しながら読むと論文中に何がまとめられているのか確認がしやすくなると思います。
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