日本におけるコロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック時の看護師に対するソーシャルサポートの精神的健康への影響:Webベースの横断的研究
Effects of social support on mental health for critical care nurses during the coronavirus disease 2019 (COVID-19) pandemic in Japan: A web-based cross-sectional study
Tatsuno J et al. Acute Med Surg.2021Apr 10;8(1):e645.
https://doi.org/10.1002/ams2.645
COVID-19のパンデミック状況下で、ソーシャルサポートが医療従事者のPTSDに対して保護効果をもつことが示されています。しかし、日本においてはこのことについて十分に検討されていないこと、またソーシャルサポートは国や民族、文化によって異なることが予想されるため、本研究が行われました。
対象者は、COVID-19患者のケアを行っているかどうか関わらず、ICUやプログレッシブケアユニットを含む急性期病棟で働く看護師です。COVID-19が確認された、あるいは疑われる患者と直接関わったことがあるかについても確認しています。
ソーシャルサポートにはMultidimensional Scale of Perceived Social Supportを用いて測定されました。この尺度は、家族支援、親しい人の支援、友人の支援の3つの下位尺度からなる12項目の質問紙で、各項目は、1(強く反対)から7(強く賛成)までの7段階の自己報告尺度となっています。
3つの下位尺度の合計(7-84の範囲)がソーシャルサポートの総レベルを表し、スコアが高いほどソーシャルサポートのレベルが高いことを意味します。不安や抑うつのレベルを評価するためにHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)(A. S. Zigmond, 1983 )PTSDの症状を評価するためにIES-6(Impact of Event Scale-6)( Giorgi G, 2015 )を使用しています。
参加者の平均年齢は37.4歳、64.4%が女性で、臨床経験年数の平均は9.4年の計334名の看護師です。本研究では4年以上の教育歴(学士以上)をもっているとPTSDは発症しにくい、ソーシャルサポートが低いと不安症状、うつ症状を発症しやすいことが観察されています。
COVID-19患者に直接対応していることは、精神衛生上の問題と特に関係は見られませんでした。
社会的支援は、後々受ける心理的苦痛に対して影響を及ぼすことがこれまで指摘されているため、本研究ではそのような時間差を考慮できなかったことが結果へ影響を与えているかもしれません。(つまり調査時のPTSDではなく、後に現れるかもしれない心理的苦痛に対して社会的支援が保護的な役割をする可能性もあるということ)
本研究のデータは2020年11月5日から12月5日にかけて集められており、これは日本の感染第3波の前くらいの時期になります。
不安や抑うつ症状は、ストレスとなる出来事を初めて経験したときのストレス反応として現れることが多い。支えてくれる人がいることで精神的な支えになり、それらの症状を軽減する機能があることが考えられます。
COVID-19に関連する研究報告は、何を調査したのかだけではなくいつの時点の調査なのかも加味して結果を見ていく必要がありますね。
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