レビュー研究の種類④ラピッドレビュー

レビュー

ラピッドレビュー方法論のスコーピングレビュー
A scoping review of rapid review methods
Andrea C. Tricco et al. BMC Med. 2015; 13: 224.
DOI:10.1186/s12916-015-0465-6

システマティックレビューは、個々の研究結果を総合的に解釈し、患者の意思決定支援、臨床実践ガイドライン、政策概要などへ研究成果を反映させることができるため有用なツールであることは、こちらの通り( 過去記事リンク )です。

しかし、システマティックレビューは、その方法が厳密であり、実施に半年から2年はかかり、研究者にとってかなりのスキルが要求されます。
コクランによると、引用文献のスクリーニング(タイトルと抄録)、本文のスクリーニング、データの抽出、バイアスリスクの評価などのすべての手順は、2人が独立して行う必要があるとされています。

ただシステマティックレビューのような知見が欲しいが、多くの時間的リソースを割くことなく、もっとタイムリーな情報が欲しい場合もあるかもしれません(2020年のCOIVD-19に関する情報などまさにそうですね)。

そのためラピッドレビュー(rapid review)が、行われることがあります。
システマティックレビューのプロセスを簡略化したり省略したりして、タイムリーに情報を得ることができる方法論です。ただし、この方法論はきちんと確立されているわけではないために本研究では、ラピッドレビューの方法論に関するスコーピングレビュ―を実施しています。

考察

この研究では1997年から 2013年にかけてのラピッドレビューを行った研究100本をレビューしています。

結果的に下記が本研究のハイライトになります。

  • 50個の異なるラピッドレビューアプローチが特定され、方法論が統一されていない、様々な用語が使われている。
  • 同じ目的で実施したシステマティックレビューとラピッドレビューの結果を比較したところ、一部(6本中1本)で結果が異なっていた。
  • ラピッドレビュー手法の合理的な枠組みとしては下記が考えられる。
  • ・プロトコルを使用しない
    ・文献検索を含める基準を制限する(日付と言語に限定した文献検索など)
    ・文献検索結果を1人だけで選別する
    ・品質評価を行わない(場合によっては、1人の査読者が行い、2番目の査読者が検証するデータ抽出と品質評価)
    ・メタアナリシスを行わない

    これらにより早い期間でレビューを実施することが可能となりますが、未だラピッドレビューによって報告された知見の質はそこまで高くないだろうと本研究の著者は結んでいます。