ストレスが溜まると甘いものがほしくなると言いますが、病棟に置かれたチョコレートはどれくらいのペースでなくなってしまうのかという日常の1コマを研究と呼べるものまで昇華させた(?)調査報告です。
とりあえず患者さんへ資するという本当の意味での研究の社会的意義は置いておきます。ただただ大人の全力といいますか、いろいろと勉強になりました。
病棟に置かれたチョコの生存期間:秘密の観察研究
The survival time of chocolates on hospital wards: covert observational study
Parag R Gajendragadkar, et al. BMJ 2013; 347
doi:https://doi.org/10.1136/bmj.f7198
舞台はイギリスで、3病院4病棟で調査が行われます。
用意されたのは、ネスレのQuality StreetとキャドバリーのRosesのチョコレートの2種類です。
それらを病棟に置き、どれくらいの早さで食べられてしまうのか(チョコレートの生存期間)、そして食べたのは誰か(職種)?を観察しました。
合計258個(8ボックス)のチョコレート(研究参加者)が病棟に置かれました。
研究デザインは多施設共同前向きコホート研究です。
まずチョコレートを置いてから6時間(360分)観察します。結果的にチョコレート258個中191個が食べられてしまいました。平均観察期間は254分(95%信頼区間179~329分)です。
チョコレート消費モデルは非線形であり、最初に急速に消費されました。そして時間とともにその消費スピードは緩やかになります。指数関数的減衰モデルがこれらの結果に最も合致していて50%のチョコレートが食べられるまでの時間(半減期)は99分でした。
また、チョコレートの箱が病棟で開けられるまでの平均時間は12分となりました。
チョコレートを食べた割合が1番高かったのは看護師や看護助手で28%だったとのことです。
さらによりQuality Street よりRosesのほうが人気だったことも分かっています。
この論文の結果がどうこうではありません。論文を書く上でのイントロ、方法論、そして考察の内容(何を書くか)などがシンプルに詰まっています。
チョコレート消費における看護師の割合が高かったことについて、「スタッフの数が他職種より多いからかもしれない」ときちんと考察しています(まぁそうですよね笑)
消費と心代謝系障害の関連について先行研究を引用しています。チョコレートの消費は一年中季節の影響(クリスマスまでの消費増加、新年のダイエットによる消費減少、イースターまでの消費増加)を受けていると思われる研究の限界についてもきちんとあくまで真面目に書いています。
上記に加え、チョコレートを研究の参加者として扱う研究デザインなどが個人的にいろいろと勉強になったポイントでした。
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