看護アセスメントによる高齢入院患者のせん妄リスク評価

原著論文

高齢入院患者のせん妄リスク識別のための有効な手段としての看護アセスメント
Nursing assessment as an effective tool for the identification of delirium risk in older in-patients: A case–control study
Elena Solà-Miravete 1, Carlos López 2, Estrella Martínez-Segura et al. J Clin Nurs. 2018 Jan;27(1-2):345-354
DOI:10.3390/ijerph17030835.

看護分野での症例対照研究

手術後のせん妄の発生率は内科患者で11%~42%、外科患者で10%~70%と報告されています。
臨床集団において予測モデルによって特定された主な危険因子は、認知障害、機能障害、併存疾患、高齢といった対象(患者)要因とポリファーマシー、感染、手術、脱水などの促進要因に分類することができます(Inouye et al, 2014; Perello Campaner, 2010)。
また、せん妄は、患者要因と促進(誘発)要因の数と強度の間の複雑な相互作用の結果であることが報告されています(Grover & Kate, 2012; Inouye et al, 2014; Rudolph et al, 2011)。 ただせん妄に対するリスク要因は様々な研究で十分に確立されているものの、これらの尺度はほとんど知られておらず、専門家による使用頻度も低いようです。

そこで本研究では、看護師が日常的に用いている評価項目を使用してせん妄発祥の予測因子を検証するケースコントロールスタディ(症例対照研究)を実施しています。

情報が集められたのはカタルーニャ州南部の主要な急性期病院(スペイン、トルトサ市、Vergede la Cinta病院)です。
外科および内科における、いくつかの科(一般外科、泌尿器科、外傷・整形外科、内科、神経科、その他の内科)の患者から集められています。研究対象者は2013~2014年に入院した65歳以上の患者です。小児科、産科、救命救急センターに入院した患者は、通常の入院患者ではないため、対象から除外され、入院時に(CAM-S基準で)せん妄のあった患者も除外されました。

8つのせん妄リスク因子

454人の患者(せん妄あり150人、せん妄なし304人)が調査され、最終的な多変量解析モデルで明らかになった因子は、年齢、尿失禁、尿道カテーテル、アルコール依存、認知症の既往、ベッドから出られない/安静にできない、習慣性不眠症、既往の8つになります。

この研究の結果からは、年齢が1歳増えるごとに、せん妄を起こすリスクが15%増加することや不眠症の患者や過量のアルコールを摂取している患者では、せん妄発症リスクは、これらの問題がない患者と比較して約16倍であることが示されています。

著者らの結びとして、看護アセスメントがせん妄のリスク評価に有効なツールとして普及すれば、患者が初めて入院した時点で予防的な措置を講じることができるようになる可能性があることと看護アセスメントを用いたせん妄リスク評価は、看護師に受け入れられやすく、その後のニーズに基づいた個別ケアの計画にも有効である可能性が延べられています。

この辺りについては今後、外的妥当性の検証や予防的措置の知見も重要になってきそうです。

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